日々の記録と、感じたこと

ベイエリアに暮らすエンジニアが日々体験したことを書き連ねます。

アメリカで 2020 年にパンデミック生活を体験して

2020 年 4 月(下書きに入れていたまま月日が経過してしまった)。パンデミック生活真っ只中である。無事生き延びられたと仮定して、この時期を将来どのように思い出すかはわからない。けれども、今まさに自分の人生観や価値観に不可逆な影響を与えていることは間違いない。その新鮮な気持ちをできるだけ書き記してみたいと思う。

 

誰もここまでの甚大な被害を予見できなかった

最初に COVID-19 が観測された時、各自の反応は様々だった。しかし、勤め先の在宅勤務が決まった時に同僚と "See you next month." と言い合うくらいには楽観的に捉えていた(それでもそんなに続かないだろう、くらいのトーンを含んでいた)。それがここまで甚大な被害をもたらし、そして、長期間続くとは、ほとんど誰も予想していなかったのではないかと思う。

 

被害を受ける産業と、比較的軽微な被害で済んだ産業と

個人的に痛烈に刺さったのは、被害を受ける産業と比較的軽微な被害で済んだ産業がかなり明確に分かれた点である。具体的には、物理的店舗を構える形態や、中でも娯楽領域に当たる業界が被害を受けた印象だ。

 

筆者は幸いにしておそらく最も影響を受けなかった IT 産業に従事しているため、個人的な被害は少なかった。しかし同時に、今現在最も時代の恩恵を受け、先進的な勤務体制が導入され、リモート設備も整っている IT 産業・従事者が影響を受けず、必ずしもそうではないだろう業界がより被害を受けた状況は自分の心に重くのしかかった。自分は今の立場を活かして、より助けを必要としている人の力になった方がいいのではないかと考える日々であった。

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ソース: The Industries Worst Affected by the COVID-19 Job Crisis (https://www.statista.com/chart/21669/unemployed-persons-in-the-us-by-industry/)

次世代型の働き方とその歪と

今回のパンデミック、また、それに伴う在宅勤務を受けて、多くの企業が働き方を再考したであろう。それはもしかしたら不可逆な変化を多くの企業や働き方にもたらしたかもしれないし、もたらさなかったのかもしれない。いずれにせよ、パンデミックという外部イベントによってほとんどの人がその変化を強制され、メリットに加えて、課題も見えてきた。

メリットの一つはおそらく(短期的な)生産性の向上と柔軟な働き方である。通勤や会議室の移動等が減り、おそらく使える時間は多少なりとも増えた。また、家族とともに過ごしたいなど、オフィスの場所に縛られない働き方に恩恵を受ける人は少なくないだろう。ただ、課題もあり、それらは家族構成や居住形式によっても変わってくる印象だ。

具体的には、小さいお子さんを含めた家族で暮らしている場合、学校も在宅授業となると、働きながらお子さんの世話をするため、まとまった時間が取れなかったり、それに伴って、仕事も家庭も十分な時間を取れず、どちらも望んだ働きができない結果、罪悪感を覚えたり、疲労も蓄積していく。

また、逆に筆者のように一人暮らしの場合、慣れるまでは孤独との戦いになる。人との交流、特に直接の交流は人によっては必要であり、そうしたリモート勤務体制で失われた部分をどう次世代の働き方が包摂していくのかは今後の課題になる。

余談になるが、アメリカ、特にベイエリアの IT 企業では恒久的にリモート体制を取り入れた企業も出始めた。

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自分の将来に与えた影響について

本筋とあまり関係がないが、少し自分なりに考えたことを最後に記しておきたい。先の見えない苦しい状況というのは多くの人にとって難しい。そのような時にどういうメンタリティでいればいいかということを当時考えた。『夜と霧』という本がある。この本自体は精神科医であり、心理学者でもある筆者が、強制収容所時代にどのような人が打ちのめされず、精神を強く保ったかの記録だったと記憶している。その中で、彼は創造性を保ち、生きる目的を持ち続けていた人が精神を保っていたと観察している(正確な描写は著作を参照してほしい)。

何が言いたいかといえば、今回のパンデミックのように外部要因による先が見えない苦境に立たされた時も、もしかしたら向き合い方で、気の持ちようは変わるかもしれないという発見だ。当然、限界はあるものの、自身もフランクル先生を見習って、しなやかでありたいと感じたものであった。

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