日々の記録と、感じたこと

ベイエリアに暮らすエンジニアが日々体験したことを書き連ねます。

アメリカに来た当初の感想 - その 1: 社会制度編

私が日本からアメリカに移った時に当惑したのは、細々とした社会制度の違いでした。というよりも、正確にはそもそも日本の社会制度も明確には理解できておらず、それに加えて、アメリカの慣れない制度を把握する必要があったため、来た当初は一人で困惑していました。

具体的には以下のような内容です:

  • 税制度(確定申告/Tax Return 含む)
  • 年金制度(社会保障協定など、二国間の扱い含む)
  • 保険制度(HSA など、聞き慣れない用語に混乱)
  • 金融商品(401K などの老後資金に加えて、運用の基礎知識など)

これらに加えて、車の免許の取得など(アメリカの免許試験は車持込み式。免許ないのにどうやって車を試験場まで持ってくのか…?)細々とした違いに、一つ一つ当惑していました。

 

余談: アメリカのインフレ事情について

アメリカにも年金制度はあるのですが (Social Security) 老後生活をまかなえるほどの金額を拠出してくれないため、現実的には退職口座等を用いて自主的に積み立てる必要があります(e.g.  401K)。ただ、税優遇措置のあるオプションが複数あったり、確定拠出年金の上限が日本より高かったりと、その分、金融的な裾野も発達している印象を受けます。

後述しますが、ここ数年はインフレが続いていることもあり、金融リテラシーがある人の間では、あまり現金を持たないのがセオリー化しており、株式や債券、CD(譲渡性定期預金)、Checking/Savings 口座など、現金の保有・運用方法も多くあり、それらの活用が(日本よりは)身近な印象があります。

個人的に驚いたのは Savings account と呼ばれる銀行口座で、毎月の引き出し回数制限があること以外はほぼ普通口座と同じで、それにもかかわらず、比較的高い利率を提供します(e.g. 2019 年現在 2%)。これはほとんどゼロに近い金利しか経験していない最近の日本から来た身には新鮮でした。

この背景には(もちろんそれだけではないのですが)アメリカのインフレ事情があります。 具体的には、最近の日本は長らくデフレなので実感がわきづらいのですが、インフレ(毎年物価が上昇していく状態)になると、現金の価値が目減りしていくため、投資インセンティブが働きます。

アメリカの消費者購買指数の推移(出典: Wikipedia - United States Consumer Price Index)

どういうことかというと、2020 年に 100 円で買えていたおにぎりが 2022 年に 120 円になったとすると、同じ 100 円でも実質的な価値(この場合は買えるおにぎり)が低減します。そのため、現金をそのまま保有しておくのは損をする可能性が高く、この結果、より収益性の高い活用(運用)をするインセンティブが強く働きます。

これは実際に日本の外に出るまで実感できなかった違い(デフレ vs インフレ)であり、自分の固定化された視点に気付かされ、パラダイムシフトが起きた瞬間でした。

最後に

余談の方が長くなってしまいましたが、次回からはそれぞれの社会制度のトピックについて詳しく見ていきたいと思います。